『私のミノルタフレックス』は写真家・写真評論家として数多くの写真関連書を残した吉川速男氏が愛用する二眼レフカメラ「ミノルタフレックス」を詳しく紹介した一冊である。
玄光社から1951年(昭和26年)に発行され、当時の最新型であったミノルタフレックスII型を中心に、その構造や特徴、操作方法、撮影技法、アクセサリーなどを幅広く解説している。
しかし、本書の価値は単なるカメラの解説書というだけではない。ローライコードとの比較、国産二眼レフ事情、千代田光学の製造現場、さらに当時のミノルタフレックス人気についても触れられており、戦後間もない日本の二眼レフ文化を知る歴史資料としても興味深い存在である。
館長の購入記録
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DATA/データ
- Title: My Minoltaflex
- Author: Hayao Yoshikawa
- Printing Date: July 10, 1951
- Publication Date: July 15, 1951
- Year of Publication: 1951
- Original Price: ¥270
- Publisher: Masao Kitahara
- Publishing Company: Genkosha
- Printer: Hiroshi Yamada
- Printing Company: Sanyosha Printing Co., Ltd.
- Photographic Plate Making: Hirohashi Art Photoengraving Studio
- Frontispiece Printing: Seikido Printing Co., Ltd.
- Book Design: Koshiro Onchi
■記事のポイント
- 1951年発行『私のミノルタフレックス』初版を紹介
- 著者・吉川速男と玄光社について解説
- ミノルタフレックスII型の特徴と本書の内容を紹介
- 1950年代初頭の国産二眼レフ事情を読み解く
吉川速男著『私のミノルタフレックス』とは

- 1951年に玄光社から発行された二眼レフ専門書
- 著者・吉川速男とは
- 1951年7月15日に発行された初版本
- 鮮烈な赤と青で構成された表紙
- 表紙を飾るミノルタフレックスII型
- 装幀を手掛けた恩地孝四郎
- 「はしがき」に記された出版の目的
- 1951年春の最新型だったミノルタフレックスII型
1951年に玄光社から発行された二眼レフ専門書
『私のミノルタフレックス』は吉川速男著、玄光社発行による写真・カメラ関連書である。
国立国会図書館にも吉川速男著・玄光社・1951年の資料として登録されている。
今回紹介する初版本の奥付を見ると昭和26年7月10日印刷、同年7月15日発行と記載されている。
つまり西暦では1951年7月15日の発行である。
定価は270円。奥付には著作者として吉川速男、発行者として北原正雄、発行所として玄光社の名が確認できる。
また、CiNii Booksには1954年1月発行の「3版」が登録されており、初版が1951年7月であったことも明記されている。3版は214ページ、19cmと記録されているため、本書が初版刊行後も版を重ねたことが分かる。
著者・吉川速男とは
吉川速男氏は1890年生まれ、1959年没の写真関係著述家である。国立国会図書館でも「吉川, 速男, 1890-1959」の著者標目で多数の著作が登録されている。
『私のミノルタフレックス』だけを執筆した人物ではなく、カメラの使い方や撮影技法などに関する多くの著書を残した。
興味深いのは、特定の愛用カメラをテーマに「私の○○」という書名の著作を複数発表していることである。
その代表例の一つが1938年(昭和13年)に玄光社から発行された『私のロライ』だ。同書も国立国会図書館所蔵資料のデジタル化データから存在を確認できる。
その流れから考えると『私のミノルタフレックス』というタイトルには単なる製品解説ではなく、著者自身が一台のカメラと向き合い、その魅力や使い方を伝えるという吉川速男らしい姿勢が表れている。
1951年7月15日に発行された初版本

今回紹介している個体で特に注目したいのが奥付である。
そこには次のように記されている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 私のミノルタフレックス |
| 著作者 | 吉川速男 |
| 印刷日 | 昭和26年7月10日 |
| 発行日 | 昭和26年7月15日 |
| 発行年 | 1951年 |
| 定価 | 270円 |
| 発行者 | 北原正雄 |
| 発行所 | 玄光社 |
| 印刷者 | 山田博 |
| 印刷 | 株式会社三陽社印刷 |
| 写真製版 | 廣橋美術精版所 |
| 口絵印刷 | 精喜堂印刷株式会社 |
| 装幀 | 恩地孝四郎 |
古書市場でも昭和26年版が「初版」として確認できるほか、国立国会図書館の書誌も1951年刊行としている。
一方、1954年には3版が存在する。
そのため、1951年当時の記述をそのまま確認できる初版本はミノルタフレックス研究の資料としても興味深い。
鮮烈な赤と青で構成された表紙
『私のミノルタフレックス』の表紙は現在見ても強烈な印象を残す。
鮮やかな赤と青緑を大胆に組み合わせ、中央には大きなミノルタフレックスの写真が配置されている。
タイトルの「私のミノルタフレックス」は白文字で大きく表現され「ミノルタフレックス」の部分は縦書きとなっている。
中央の黒い二眼レフが赤い背景から浮かび上がる構成は、1950年代の写真書らしい力強さを感じさせるデザインである。
裏表紙はほぼ全面が赤色で、下部には「G」「TOKYO」と眼を組み合わせた玄光社のマークが配置されている。
そして右下には「¥270」と定価が印刷されている。
表紙を飾るミノルタフレックスII型
表紙の主役は、もちろんミノルタフレックスである。
本書の「はしがき」で吉川氏は愛機の一つであるミノルタフレックスII型について一冊の小冊子を作ることにしたと説明している。
ミノルタフレックスIIは1950年に千代田光学精工から発売された120フィルム使用の6×6判二眼レフカメラである。
千葉県立現代産業科学館の収蔵資料では、撮影レンズにロッコール75mm F3.5、シャッターにSコーナンラピッドを備えたカメラとして記録されている。
また同館の研究報告では、ミノルタフレックスIIは戦後最初に作られたミノルタの120フィルム二眼レフカメラとされている。1937年のミノルタフレックスIを発展させたモデルで、ロッコールレンズにはコーティングが施されたことも紹介されている。
本書が発行された1951年は、このミノルタフレックスIIが登場して間もない時期だったのである。
装幀を手掛けた恩地孝四郎
奥付には、
装幀・恩地孝四郎
との記載がある。
これは本書を資料として見る際に見逃したくないポイントである。
鮮烈な色面と写真、文字を大胆に組み合わせた表紙は単に古いカメラ本という枠に収まらず、戦後初期の出版デザインを感じさせるものとなっている。
古書として『私のミノルタフレックス』を見る場合には内容だけでなく、この特徴的な装幀にも注目したい。
「はしがき」に記された出版の目的

本書の性格を理解するうえで重要なのが冒頭の「はしがき」である。
吉川氏は自分が使用しているカメラ、あるいはこれから使おうとしているカメラについて詳しく知ることは楽しいことであり、それによってカメラへの愛着が生まれ、その性能を十分に発揮させることにもつながるという考えを示している。
そして、自らの愛機の一つであるミノルタフレックスII型について一冊をまとめることにしたと説明する。
つまり本書はメーカーが制作した公式取扱説明書ではない。
一人の写真家が実際に愛機として接したミノルタフレックスを、自らの経験と知識をもとに解説した本なのである。
ここに『私のミノルタフレックス』最大の魅力がある。
1951年春の最新型だったミノルタフレックスII型
さらに「はしがき」にはミノルタフレックスII型について、
1951年度春現在の最新型
であることが記されている。
本書が非常に興味深い理由の一つがここにある。
現代のクラシックカメラ研究書が過去の機種を振り返って解説したものではなく、ミノルタフレックスII型が現役の最新型だった時代に書かれた本なのである。
発売から長い年月を経た後の評価ではなく、当時の写真家が新しい国産二眼レフをどのように見ていたのかを知ることができる。
『私のミノルタフレックス』の内容を詳しく見る

- 国産二眼レフについて解説
- ローライコードとミノルタフレックスを比較
- 一眼レフと二眼レフの違い
- 過去のミノルタフレックスを振り返る
- 千代田光学を訪ねて
- ミノルタフレックスの外観と構造
- ミノルタフレックスならではの特徴
- フィルムとアクセサリーについて
- ミノルタフレックスの使い方
- 接写・露出・シンクロ撮影も扱う
- 「良い写真を作るには」という撮影論
- 「愛機としてのミノルタフレックス」
- カメラの改造・工作まで紹介
- 「あとがき」に見る当時のミノルタフレックス人気
- 『私のミノルタフレックス』が現在も貴重な理由
国産二眼レフについて解説
『私のミノルタフレックス』は、いきなり操作方法から始まるわけではない。
目次を見ると、まず「私の写真」に続いて「今日の国産二眼レフ」という項目が置かれている。
その中には、
- 二眼レフの二つの形式
- ローライコードとミノルタフレックス
- 一眼レフと二眼レフ
- ローライコードとオートマットの比較
といった内容が並ぶ。
これは二眼レフの歴史を研究するうえでも非常に興味深い構成である。
1950年代初頭の日本では国産カメラ産業が急速に成長していた。そうした時代に国産二眼レフがどのような位置にあったのかを当時の視点から知ることができるのである。
ローライコードとミノルタフレックスを比較
二眼レフ愛好家として特に注目したいのが「ローライコードとミノルタフレックス」という項目である。
ローライは二眼レフを語るうえで避けることのできない存在であり、日本製二眼レフの多くもローライの設計思想から大きな影響を受けた。
本書ではミノルタフレックスだけを孤立して紹介するのではなく、ローライコードとの比較を通して二眼レフとしての特徴を説明している。
さらに「ローライコードとオートマットの比較」という項目もある。
現在のクラシックカメラ愛好家にとっても、1951年の日本でローライ系カメラと国産二眼レフがどのように比較されていたのかを確認できる貴重な部分である。
一眼レフと二眼レフの違い
目次には「一眼レフと二眼レフ」という項目も設けられている。
現在では一眼レフと二眼レフの構造的な違いは容易に調べられるが、本書が刊行されたのは1951年である。
二眼レフが実用品として広く使われていた時代に、その特徴や利点を説明していることに意味がある。
続く「楽しい二眼レフ」では「二眼レフの特色」「傑作をつくる二眼レフ」といった項目が設けられており、吉川が二眼レフというカメラ形式そのものに強い魅力を感じていたこともうかがえる。
過去のミノルタフレックスを振り返る

53ページからは「過去のミノルタフレックス」が始まる。
ミノルタフレックスII型だけではなく、それ以前のモデルにも目を向けている点が重要である。
ミノルタフレックスの初代モデルは戦前に登場している。
その後、戦争による空白期を経て1950年にミノルタフレックスIIが登場した。千葉県立現代産業科学館も同機を1937年に発売されたミノルタフレックスIの改良型と説明している。
本書は、この系譜を刊行当時の視点で振り返る資料でもある。
千代田光学を訪ねて
58ページからは「千代田光学を訪ねて」という章が設けられている。
千代田光学精工は当時ミノルタブランドのカメラを製造していた会社であり、本書では単なる製品紹介を越えて、そのメーカー側にも目を向けている。
続いて、
「科学的にテストされるミノルタフレックス」
「ミノルタフレックスの機械美」
といった項目が配置されている。
つまり本書では完成したカメラの使い方だけでなく、どのような考え方で作られ、検査され、製品として完成していくのかという領域にも踏み込んでいる。
1951年当時の千代田光学と国産カメラ製造を知る資料として、この部分は非常に興味深い。
ミノルタフレックスの外観と構造
73ページからは「ミノルタフレックスを観察する」と題し、カメラそのものを細かく見ていく。
目次には、
- ミノルタフレックスの外観
- ネームプレート
- ファインダーフッド
- レンズ部分
- ノップ
- 革の色について
などが並んでいる。
79ページからは「ミノルタフレックスの構造」に移り、シャッター、上下レンズのコーティング、ファインダーカバー、フィルム捲上装置、焦点調節ノップなどを解説する。
現代でいえば詳細な機種レビューに近い内容であり、1951年の書籍としては非常に細かな観察が行われていることが分かる。
ミノルタフレックスならではの特徴
86ページからは「ミノルタフレックスの特徴」がまとめられている。
目次だけでも、
「ロッコールの素晴らしさ」
「見やすいシャッター目盛」
「確実なシンクロ装置」
「明るいピントグラス」
「ボタン一つで透視ファインダーに」
「ファインダーフッドは一動作で」
「大きく使いよいノップ」
「便利なフィルム表示盤」
「優秀なファインダー反射鏡」
など、実際の使用感を重視した項目が並ぶ。
単なるスペック表ではなく、撮影者がカメラを操作したときに何が優れているのかを説明しようとしている点が、本書らしいところである。
フィルムとアクセサリーについて
93ページからは「フィルムと附属品」が始まる。
フィルムの選択や現像、カラーフィルム、フィルター、レンズフッド、ピントフッド、三脚、レリーズなど、撮影に必要な周辺用品まで解説対象となっている。
ミノルタフレックス一台を紹介するだけでなく、実際に写真を撮るためのシステム全体を説明しようとしているのである。
ミノルタフレックスの使い方
114ページからは「ミノルタフレックスの使い方」となり、より実践的な内容へ進む。
フィルムの入れ方、撮影準備、絞りとシャッターの決め方、シャッターの切り方、フィルムの捲上げ、焦点深度の見方、フィルムの取り出し方、カメラの持ち方などが順番に説明されている。
ここまで来ると、現在でいう取扱説明書や実践マニュアルとして利用できる内容である。
しかし、メーカー純正説明書とは異なり、写真家の視点から「どう使えばよいのか」がまとめられているところに本書の個性がある。
接写・露出・シンクロ撮影も扱う
基本操作だけでは終わらない。
目次には「シンクロ用具について」「接写用レンズについて」「露出計の使い方」といった項目もあり、さらに「撮影補助用具の使い方」へと続く。
「接写用ミラーラップの使い方」「ミノルタ用Ub型フラッシュガンの使い方」など、具体的なアクセサリーの使用方法まで扱っている。
そして137ページからは「シンクロ撮影の実際」が始まる。
ミノルタフレックスを購入した初心者向けの入門書でありながら、使い込んでいくための応用撮影までカバーしているのである。
「良い写真を作るには」という撮影論
142ページから始まる「よい写真を作るには」も興味深い。
ここでは、
「良いカメラと良いフィルム」
「カメラアイの養成」
「撮影・現像を一貫して」
「写真の成否はトリミングで」
「すべて自分でやること」
「再びトリミングの重要性について」
「写真と流行」
といったテーマが並ぶ。
もはやミノルタフレックスの操作説明ではない。
吉川速男自身の写真を撮ることに対する考え方や写真術にまで内容が広がっている。
そのため『私のミノルタフレックス』は機種別解説書であると同時に、1950年代の写真文化や写真家の思想を知るための資料でもある。
「愛機としてのミノルタフレックス」
151ページからは、その名も「愛機としてのミノルタフレックス」という項目が始まる。
この章題こそ、本書のタイトルにある「私の」という言葉を象徴している。
カメラボディへの工作、ルーペの取換え、現像・引伸ばし、そして「愛機ミノルタを讃う」と続く。
ミノルタフレックスを単なる撮影機材として扱うのではなく、使い手が手を加えながら自分の道具へと育てていく存在として捉えていることが分かる。
カメラの改造・工作まで紹介
後半ではさらに、
- ロッコールレンズのボケについて
- ピントグラスを更に明るく
- 速写ケースの改良
- 接写レンズへの工作
- 私のミノルタフレックス装置の全貌
などが掲載されている。
現在の感覚でいうカスタマイズやDIYに近い内容である。
完成品をそのまま使用するだけではなく、自分の撮影スタイルに合わせて改良する。
1950年代の写真愛好家とカメラとの距離感を知る意味でも面白い部分である。
「あとがき」に見る当時のミノルタフレックス人気
本書を歴史資料として見るなら「あとがき」は見逃せない。
吉川氏は戦後にミノルタフレックスが再び市場へ現れると写真家から注目され、話題となり、憧れの対象となっていった状況を記している。
さらに人気が高まったことで入手が難しくなり、市場相場が定価を大きく上回るような状況にも触れている。
これは後世の研究者が販売台数や広告から推測した話ではなく、1951年という当時に書かれた記録であることが重要だ。
本書刊行前年の1950年にミノルタフレックスIIが発売されていたことは博物館資料からも確認できる。
発売から間もないミノルタフレックスIIが、当時の写真愛好家からどのように受け止められていたのか。その空気感まで伝えてくれるのが『私のミノルタフレックス』なのである。
『私のミノルタフレックス』が現在も貴重な理由
『私のミノルタフレックス』は単なる古いカメラ本として片付けるには惜しい資料である。
1951年当時の最新型であったミノルタフレックスII型をリアルタイムで解説し、その構造、操作方法、アクセサリー、撮影技法、改造方法にまで踏み込んでいる。
さらにローライコードとの比較や国産二眼レフについての考察、千代田光学への訪問、当時の市場人気なども収録されている。
つまり一冊を読み解くだけで、
ミノルタフレックスの機種研究
だけでなく、
1950年代初頭の国産二眼レフ文化そのもの
を見ることができるのである。
国立国会図書館には1951年版が登録され、CiNii Booksでは1954年の3版も確認できることから、少なくとも複数の版が存在したことも分かっている。
二眼レフの歴史を研究するうえではカメラ本体だけでなく、そのカメラが現役だった時代に刊行された書籍や広告、カタログ、取扱説明書も重要な資料となる。
『私のミノルタフレックス』はまさにその代表例といえる一冊である。
まとめ:私のミノルタフレックス|著:吉川速男


『私のミノルタフレックス』はミノルタフレックスII型が最新鋭の国産二眼レフとして注目されていた時代に刊行された一冊。操作方法だけでなくローライとの比較、製造、撮影術、改造、そして当時の市場での人気まで記録されている点に大きな価値がある。ミノルタの歴史だけでなく戦後日本の二眼レフ文化を知るうえでも貴重な資料だ。
- 『私のミノルタフレックス』は吉川速男の著書
- 玄光社から1951年に初版発行
- 初版発行日は1951年7月15日
- 初版定価は270円
- 中心となる機種はミノルタフレックスII型
- ローライコードとの比較も掲載
- 千代田光学についての記述もある
- 操作方法から撮影技法まで幅広く解説
- カメラの改造や工作についても紹介
- 1950年代の国産二眼レフ文化を伝える貴重な資料
