昭和35年(1960年)に登場した「Rollei Magic(ローライマジック)」は、二眼レフカメラとしては非常に珍しいプログラム自動露出機構を搭載したモデルである。
当時の二眼レフといえば、撮影者がシャッタースピードと絞りを設定して撮影するのが一般的であった。ローライマジックは、そこへセレン光電池式の露出計と専用シャッターを組み合わせ、露出設定をカメラ側に任せるという新しい撮影スタイルを実現した。
一方で、ローライマジックには「リコーオート66に似ている」という話も存在する。実際、リコーオート66は1959年発売であり、ローライマジックより先に登場している。このため、単純に「ローライマジックがリコーオート66をコピーした」と断定するのは適切ではない。
本記事ではローライマジックの基本的な使い方からⅠ型・Ⅱ型の違い、さらにリコーオート66との関係まで、当時の資料を踏まえて詳しく解説する。
- 1960年登場のプログラムAE二眼レフ
- セレン露出計と専用シャッターを搭載
- Ⅰ型は自動露出、Ⅱ型はマニュアルにも対応
- リコーオート66との類似性を検証
ローライマジックの使い方を解説

ここでは、昭和35年(1960年)に登場した「Rollei Magic(ローライマジック)」の基本的な構造と操作方法を解説する。
ローライマジックを開発したフランケ&ハイデッケは、ローライフレックスで知られるドイツのカメラメーカーである。同社が二眼レフに自動露出を組み込んだことで、従来とは大きく異なる操作性を実現した。
最大の特徴は、カメラ上部に配置されたゴッセン製の大型セレン光電池式露出計である。
セレン光電池は光を受けることで電気を発生させる素子であり、当時の露出計やカメラの自動露出機構で広く利用されていた。ローライマジックでは、この露出計とプロンターマットSシャッターを連動させることで、プログラムAEを実現している。
つまり、撮影者が個別にシャッタースピードと絞りを決めなくても、カメラが被写体の明るさに応じた組み合わせを選択してくれる仕組みである。
ローライマジックの基本操作

ローライマジックの撮影で重要なのは「フィルム感度を設定する」「オートモードにする」「ピントを合わせる」という3つの操作である。
まず、カメラ上部にある露出計の感度設定を使用するフィルムの感度に合わせる。
当時の仕様ではASA 12~1600の範囲に対応しており、現在のISO感度に相当する幅広い設定が可能である。
次にカメラ側面の表示窓を確認し、Ⅰ型では「A(Auto)」が表示される位置に露出設定ダイヤルを合わせる。

これによってプログラム自動露出が有効になる。
あとはファインダーで構図を決め、ピントを合わせてシャッターを切るだけでよい。
【ローライマジックの自動露出】
フィルム感度を設定
↓
オート(A)に設定
↓
ピントを合わせる
↓
シャッターを切るカメラが絞りとシャッタースピードの組み合わせを自動的に選択する。
Ⅰ型の自動露出範囲は絞りF3.5~F22、シャッタースピード1/30~1/300秒である。したがって、現代のデジタルカメラのように暗所でシャッタースピードを自由に遅くできるわけではない点には注意が必要である。
また、セレン光電池式露出計は電池を必要としない一方、長い年月による劣化が問題となりやすい。現在、中古のローライマジックを使用する場合は露出計が正常に作動するかどうかが重要なチェックポイントとなる。
ローライマジックのスペック
| 項目 | Rollei Magic Ⅰ型 |
|---|---|
| 名称 | Rollei Magic |
| 製造期間 | 1960~1962年 |
| フィルム | 120/6×6cm |
| 撮影レンズ | Schneider-Kreuznach Xenar 75mm F3.5 |
| ビューレンズ | Heidosmat 75mm F3.5 |
| シャッター | Prontormat-S |
| 自動露出 | 1/30~1/300秒、F3.5~F22 |
| 感度設定 | ASA 12~1600 |
| サイズ | 約88×106×147mm |
| 重量 | 約1,000g |
撮影レンズにはシュナイダー・クロイツナッハ製Xenar 75mm F3.5を採用している。ビューレンズにはHeidosmat 75mm F3.5を搭載する。
また、一般的なローライフレックスとは異なり、ローライマジックでは前玉部分を前後させてピントを合わせる「フロントセルフォーカシング」を採用している点も特徴である。
なお、資料によって細かな仕様表記や生産台数には差がある。Ⅰ型については約25,000台、Ⅱ型については12,600台とする資料があり、合計では約38,000台とされることが多い。
ローライマジックのⅠ型とⅡ型の違い
ローライマジックには1960年に登場したⅠ型と、1962年に登場したⅡ型が存在する。
両モデルは外観が非常によく似ているが、最大の違いは露出操作にある。
| 項目 | Ⅰ型 | Ⅱ型 |
|---|---|---|
| 登場 | 1960年 | 1962年 |
| 製造終了 | 1962年 | 1968年 |
| 自動露出 | ○ | ○ |
| マニュアル露出 | 制限あり | ○ |
| 自動露出の最高速 | 1/300秒 | 1/500秒 |
| レンズ | Xenar 75mm F3.5 | Xenar 75mm F3.5 |
Ⅰ型は基本的に自動露出を中心としたモデルであり、撮影者がシャッタースピードと絞りを自由に組み合わせることはできない。
これに対してⅡ型では露出計を利用して露出値を確認しながら、シャッタースピードと絞りを撮影者自身で設定できるようになった。さらにシャッターも改良され、最高速度が1/500秒まで拡大している。
この変更はⅠ型の「簡単に撮影できる」という長所を残しながら、撮影者による露出コントロールの余地を広げたものと考えることができる。
Ⅰ型の撮影方法
Ⅰ型では、まず使用するフィルムのASA感度を露出計側で設定する。
続いて露出設定をオート位置に合わせる。
露出計が測定した光量をもとに、カメラが絞りとシャッタースピードの組み合わせを自動的に決定するため、撮影者は露出値を個別に設定する必要がない。
ただし、Ⅰ型は露出計への依存度が非常に高い。
露出計が正常に作動しなければ、本来の「Magic」と呼ばれる自動露出機能を利用できなくなる。そのため、現在の中古カメラとしてはセレン光電池と露出計の状態が特に重要である。
Ⅱ型の撮影方法
Ⅱ型ではⅠ型と同じようにプログラムAEを利用できる。
一方、露出設定ダイヤル中央の操作部を押しながら回すことで、オートモードからマニュアル操作へ切り替えられる。
マニュアルでは露出計から得られる露出値を参考にしながら、シャッタースピードと絞りを撮影者自身で選択できる。
Ⅱ型の設定範囲は露出値EV8.5~18、シャッタースピード1/30~1/500秒およびB、絞りF3.5~F22である。
【Ⅰ型とⅡ型の違い】
Ⅰ型:プログラムAEを中心に簡単に撮影するモデル
Ⅱ型:プログラムAEに加えて、マニュアル露出にも対応したモデルさらにⅡ型ではシャッターが改良され、最高速度が1/500秒になった。
外観の変更は比較的小さく、両モデルを見分ける際には撮影レンズ下部のネームプレートが分かりやすいポイントとなる。
Ⅰ型は「Rollei Magic」、Ⅱ型は「Rollei Magic II」と表示されている。
生産期間はⅠ型が1960~1962年、Ⅱ型が1962~1968年である。資料によれば、Ⅰ型約25,000台、Ⅱ型12,600台で、両モデルを合わせても約38,000台とされる。
これはローライフレックスなどの主要モデルと比較すると非常に少なく、ローライマジックが歴史的にも希少なモデルである理由の一つとなっている。
ローライマジックはリコーオート66のパクリなのか
ローライマジックを語るうえで、しばしば話題になるのが「リコーオート66との類似性」である。
実際、両機には非常によく似たコンセプトが存在する。
リコーオート66は理研光学工業(現在のリコー)から1959年に発売された6×6判の二眼レフである。リコー公式の製品資料でも、プログラム露出システムを採用した二眼レフとして紹介されている。
ローライマジックは1960年の登場なので、発売年だけを比較すればリコーオート66のほうが1年早い。
ここは非常に重要なポイントである。
ただし、両機の露出制御方式には違いがある。
リコーオート66はセレン式露出計の表示に合わせて撮影者が操作する追針式のシステムであり、ローライマジックⅠ型のようにカメラが完全に自動で露出を設定する方式とは異なる。リコー公式も「ライトバリューシャッターと同メーターによる追針式露出計連動」と説明している。
つまり、
| 比較項目 | リコーオート66 | ローライマジック |
|---|---|---|
| 発売年 | 1959年 | 1960年 |
| 形式 | 二眼レフ | 二眼レフ |
| フィルム | 120、6×6cm | 120、6×6cm |
| 露出計 | セレン式 | セレン式 |
| 自動露出 | 追針式 | プログラムAE |
| 撮影レンズ | 80mm F3.5 | Xenar 75mm F3.5 |
| メーカー | 理研光学工業 | フランケ&ハイデッケ |
という違いがある。
したがって「リコーオート66とローライマジックは非常によく似た思想を持つカメラ」という説明はできるが「ローライマジックがリコーオート66をそのままコピーした」と断定するのは慎重であるべきだ。
また「ローライがリコーを訴えた」という有名な逸話については、今回確認できたリコー公式資料や主要なカメラ資料からはその訴訟の具体的な経緯を裏付ける一次資料を確認できなかった。そのため、記事では事実として断定せず「パクリ疑惑として語られている」という扱いに留めるのが適切である。
そもそも両機は1950年代末から1960年代にかけて広がった「二眼レフをより簡単に使えるカメラにする」という流れの中で登場したモデルでもある。
リコーオート66が先に登場したことは事実だが、ローライマジックの特徴は単なる露出計連動ではなく、Prontormat-Sシャッターと大型セレン露出計を組み合わせたプログラムAEを実現した点にある。
このため、両者の関係を考える際には「外観が似ているか」だけでなく「露出制御の仕組みがどこまで同じなのか」という技術面から見る必要がある。
まとめ:ローライマジックの使い方と特徴

特に興味深いのは、ローライマジックが「二眼レフ=撮影者が露出を決める」という従来のスタイルから一歩踏み出し、カメラ自身に露出判断を任せようとした点である。現在では当たり前となったプログラムAEも、1960年前後にはまだ新しい技術であった。ローライマジックは、その過渡期を象徴する一台として見ると非常に面白いカメラである。なお、現在実機を使用する場合は、セレン露出計の状態確認が特に重要である。外観だけで判断せず、実際に露出計が反応するか、シャッターや絞りが正常に連動するかまで確認したいところである。
- 1960年に登場
- セレン式露出計を搭載
- プログラムAEを採用
- Ⅰ型は自動露出が中心
- Ⅱ型はマニュアル露出にも対応
- Ⅱ型は最高1/500秒
- 生産台数は約38,000台
- リコーオート66は1959年発売
- 「パクリ」とする断定には注意が必要

