ローライフレックスは中判カメラを代表する二眼レフカメラであり、基本的には120フィルムを使用して撮影するカメラである。
120フィルムは6×6cmの大きな画面を楽しめる一方、35mmフィルムと比べると入手性や現像環境の面で扱いにくい場面もある。
そこで活用できるのが、ローライフレックス用の35mmフィルムアダプター「ローライキン(Rolleikin)」だ。
ローライキンを装着すると、通常は120フィルムを使用するローライフレックスで35mmフィルムを使用できるようになる。専用のフィルムガイドや巻き上げスプール、フィルムカウンター、ファインダーマスクなどを組み合わせることで、35mmフィルムをカメラ内部の適切な位置に保持して撮影する仕組みである。
この記事ではローライキンの種類と対応機種を確認したうえで、本体への装着方法、35mmフィルムの装填、撮影時のフィルム送り、撮影後のフィルムの取り出し方までを順番に解説する。
特に重要なのが撮影後の「フィルムカウンター」と「フィルム巻き上げ」の操作順。ローライキンは通常の120フィルム撮影とは操作方法が異なるため、ここを理解しておく必要がある。
- ローライキンの種類と対応機種
- 35mmフィルムを使うメリット
- 装着・装填から撮影までの手順
- 撮影後の巻き戻しと取り出し方
ローライキンとは?
ローライキンとは、ローライフレックスやローライコードで35mmフィルムを使用するために作られた専用アクセサリーである。
通常のローライフレックスは、120フィルムを左右のスプールにセットして撮影する構造になっている。これに対して35mmフィルムはカートリッジに収められており、フィルム幅も異なる。
そのため、単純に35mmフィルムを120フィルム用のスペースへ入れるだけでは撮影できない。
ローライキンには35mmフィルムを適切な位置へ導く「フィルムゲートアダプター」、巻き取り用スプール、フィルムカウンター、巻き戻し用のアダプターなどが用意されている。また、ピントファインダーやフレームファインダーで35mm判の画面範囲を確認できるよう専用のマスクも使用する。
120フィルムと35mmフィルム
一般的なローライフレックスは120フィルムを使用すると6×6cmの正方形画面で撮影できる。
一方、ローライキンでは35mmフィルムの「24×36mm」という一般的な35mm判の画面を使用する。
| 項目 | 120フィルム | 35mmフィルム+ローライキン |
|---|---|---|
| フィルムサイズ | 120 | 35mm |
| 一般的な画面サイズ | 6×6cm | 24×36mm |
| 一般的な撮影枚数 | 12枚 | 24枚・36枚など |
| フィルム形状 | ロールフィルム | カートリッジ式 |
| 使用するアクセサリー | 基本不要 | ローライキンが必要 |
なお、日本では120フィルムを「ブローニーフィルム」と呼ぶことが多い。海外では「120 film」や「roll film」といった呼称が一般的である。
35mmフィルムを使う利点
ローライフレックスで35mmフィルムを使用する最大のメリットはフィルムの選択肢と撮影枚数を増やせることである。
価格が安く入手しやすい
35mmフィルムは長年にわたって普及してきたフォーマットであり、現在でも複数のメーカーやブランドからフィルムが販売されている。
120フィルムと比較すると店舗やオンラインショップで見つけやすい場合も多い。
ただし、近年は35mmフィルムも価格上昇が続いているため「必ず35mmのほうが安い」と断定するのではなく、フィルム銘柄や販売店、現像方法まで含めて比較するのが適切である。
撮影できる枚数が多い
120フィルムを6×6cmで使用する場合、基本的な撮影枚数は12枚である。
一方、一般的な35mmフィルムには24枚撮りや36枚撮りなどがあり、1本でより多くの写真を撮影できる。
特にローライフレックスを日常的なスナップ撮影に使用する場合、この違いは大きい。
現像代を抑えやすい
35mmフィルムは現在でも一般的な現像フォーマットであるため、対応する写真店やラボを探しやすい。
一方、120フィルムは店舗によって店頭処理に対応していない場合があり、受付後に外部ラボなどへ送られるケースもある。
そのため、35mmフィルムは「撮影後の処理まで含めた扱いやすさ」にメリットがある。
現像が早い
35mmフィルムは対応している店舗が多く、店舗によっては比較的短時間で現像できる。
ただし、現像時間は店舗やサービス内容によって異なるため「必ず1時間で仕上がる」というものではない。
120フィルムについても専門ラボを利用すれば適切に処理できる。したがって、35mmフィルムのメリットは「現像できる場所が多く、選択肢が広い」という点にある。
POINT
ローライキンを使う最大のメリットはローライフレックスの操作感やレンズをそのまま活かしながら、現在でも流通量の多い35mmフィルムを選択できることである。
各部品の名称
ローライキンを初めて使う場合は、まず各部品の役割を理解しておくと装着作業が分かりやすい。
ローライキンの構成には世代や仕様による違いがあるが、35mmフィルムを使用するための主要部品として、フィルムガイド、巻き取りスプール、カウンターノブ、巻き戻し関連部品、ファインダーマスクなどがある。
各部名称

| 部品 | 主な役割 |
|---|---|
| オートマットストッパー | フィルムの位置を適切に保持する |
| フィルムゲートアダプター | 35mmフィルムの通過位置と画面範囲を調整する |
| 巻き上げスプール | 撮影済みフィルムを巻き取る |
| アクションファインダー用マスク | フレームファインダー側の画面範囲を示す |
| ピントファインダー用マスク | スクリーン上の35mm判画面範囲を示す |
| フィルム巻き戻しアダプター | 35mmフィルムをカートリッジへ戻す |
| フィルムカウンターノブ | 35mmフィルムの撮影コマ数を管理する |
ローライキンは単なる「35mmフィルム用の枠」ではない。フィルムの位置決め、巻き上げ、巻き戻し、画面確認までを専用部品で行うシステムである。
ローライキンの装着方法
ここからローライキンの装着方法について詳しく解説する。
なお、ここではローライフレックス2.8EとローライコードⅤbを用いた組み合わせを前提としている。
ローライキンには複数の仕様が存在し、カメラの世代によって対応するタイプが異なる。一般的なローライキン2は一定のシリアル番号以降のローライフレックスおよびローライコードに対応する仕様で、古い機種にはローライキン1が使用される。
したがって「ローライキン2ならすべてのローライフレックスに装着できる」というわけではない。
購入時にはローライフレックスまたはローライコードの機種名だけでなく、シリアル番号とローライキンの仕様を確認することが重要となる。
今回使用するローライキン
今回の構成では「ローライキン2」を使用する。
装着手順は以下の順番で進める。
- ピントファインダーマスクを取り付ける
- アクションファインダー用マスクを取り付ける
- カウンターノブを取り付ける
- フィルム巻き戻し用アダプターを取り付ける
- オートマットストッパーを取り付ける
- 巻き上げスプールを取り付ける
- フィルムゲートアダプターを取り付ける
- フィルム圧板の設定を変更する
ピントファインダーマスクを取り付ける

まず、ピントファインダーのスクリーン上に35mm判用のマスクを取り付ける。
ローライキンで使用する35mmフィルムの画面は24×36mmであるため、120フィルム撮影時の6×6cmとは画面の範囲が異なる。
このマスクによって、ピント合わせを行う際に実際に撮影される範囲を確認できる。
ローライコードⅤbのようにファインダーフードを取り外せるタイプでは比較的作業しやすい。

マスクを取り付ける際は画面の中心からずれていないことを確認する。マスクが正しく装着されていないと、ファインダー上で見えている構図と実際のネガの範囲が一致しなくなる可能性がある。
アクションファインダー用マスクを取り付ける

次に、ファインダーフード上部にアクションファインダー用のマスクを取り付ける。
これは直接ファインダーを使用して構図を確認する場合に、35mm判の撮影範囲を把握するためのものだ。

このファインダーを使用しないのであれば必ずしも装着する必要はない。
カウンターノブを取り付ける

次に、35mmフィルム用のカウンターノブを取り付ける。
ローライキン2.8系では専用カウンターノブの仕様が異なるため、手元のローライキンに付属する部品を確認する必要がある。旧仕様のアクセサリーでは本体のフィルムノブを交換してカウンターノブを取り付ける構造も存在する。

カウンターは35mmフィルムの撮影コマ数を管理するための重要な部品である。
特にローライキン使用時は通常の120フィルム撮影とはフィルム送りの扱いが異なるため、このカウンターの操作を理解しておく必要がある。
フィルム巻き戻し用アダプターを取り付ける

フィルム室の巻き戻し側に、ローライキン用のフィルム巻き戻しアダプターを取り付ける。
これは35mmフィルムのカートリッジを巻き戻すために使用する部品である。

取り付ける際はネジ部分を無理に回さないことが重要だ。ネジが正しく噛み合っていることを確認してから、ゆっくり締め込む。
オートマットストッパーを取り付ける

次に、フィルム巻き戻し用アダプターの反対側にオートマットストッパーを取り付ける。
ローライフレックスのオートマット機構では、フィルムの通過位置が重要になる。
ストッパーの先端が所定の位置に正しく収まっていることを確認する。無理な力を加えて押し込むのではなく、部品の形状に合わせて確実に装着することが大切である。
巻き上げスプールを取り付ける

続いて、ローライキン専用の巻き上げスプールをフィルム室の巻き取り側へ取り付ける。
基本的には右側を先に合わせ、その後に左側を取り付ける。

スプールが正しく固定されているかを確認し、回転に引っ掛かりがないことも確認しておく。
ここが正しく取り付けられていないと、フィルムを正常に巻き取れない可能性がある。
フィルムゲートアダプターを取り付ける

次に、ローライキンの中でも特に重要な部品であるフィルムゲートアダプターを取り付ける。
フィルムゲートアダプターは35mmフィルムが通過する位置を決めるとともに、撮影画面を24×36mmに対応させるための部品である。

取り付ける際はノブ側が巻き上げスプール側、つまりカメラ本体の上側になるようにする。
下部を先に合わせてから上部を押し込むと装着しやすい。
注意
フィルムゲートアダプターは35mmフィルムの走行位置を決める重要部品である。浮いた状態や斜めに取り付けた状態で使用してはいけない。装着後は確実に固定されていることを確認する。
フィルム圧板の設定を変更する

最後にフィルム圧板の設定を変更する。
ローライフレックス側にはフィルムサイズに合わせて圧板位置を変更できる機構がある。ローライキン使用時は120フィルム用の「6×6」ではなく、35mmフィルム用の「24×36mm」が表示される位置へ変更する。
フィルム圧板はフィルムを適切な位置に保持するための部品である。

ここを変更し忘れると、フィルム面の位置関係が正しくならない可能性がある。
また、圧板設定が正しくない場合にはカメラの裏蓋が正常に閉まらないこともあるため、無理に閉めないことが重要である。
以上でローライキンの本体への装着は完了である。
ローライキンを使った撮影方法
ここまでで、ローライフレックスにローライキンを装着した状態になった。
ここからは35mmフィルムの装填、フィルムの巻き上げ、撮影、そして最後のフィルムの取り出し方までを順番に解説する。
35mmフィルムのセット方法

まずカメラの裏蓋を開け、巻き戻し側のノブを引いて35mmフィルムのカートリッジを左側にセットする。
カートリッジが正しい位置に収まったらフィルムの先端を引き出す。
ここで重要なのがフィルムの通し方である。
ローライフレックスのオートマット機ではフィルムの先端をフィルム送り用のローラーを通してから巻き上げスプールへ導く。ローライキンの説明書でも、フィルム先端をフィルム送りローラーの間に通してから巻き上げスプールへセットする手順になっている。
その後、フィルムの先端を巻き上げスプールのスリットへ差し込む。
フィルムにたるみが残らない程度にスプールを少し回して確実に固定する。
重要
35mmフィルムの先端を正しい経路に通すこと。
特にオートマット機ではフィルム送り用ローラーを通すことを忘れないようにする。フィルムを適当に通した状態で巻き上げてはいけない。
フィルムの巻き上げ方

フィルム先端を巻き上げスプールに固定したら、巻き上げクランクまたは巻き上げダイヤルを操作する。
フィルムにたるみが残らないよう、ゆっくり巻き上げる。
最初の撮影位置までフィルムを送る際には、ローライキン側のフィルムカウンターを基準にする。

ローライキンの説明書では最初の撮影コマを設定するために、カウンターをリセットした後、フィルム送りを行ってカウンターを「1」に合わせる手順となっている。
つまり、カメラ本体にある120フィルム用のカウンターだけを見て操作するのではなく、ローライキン側の35mmフィルム用カウンターを使用することがポイントだ。
撮影方法
ここがローライキンを使用するうえで最も重要な部分である。
ローライキンでは35mmフィルム用のカウンターを利用してフィルム送りを管理する。
通常の撮影を行った後は、次の順番を守る。
重要!
シャッターを切る
↓
フィルムカウンターノブを押す
↓
フィルムを巻き上げる
ローライキンの説明書では撮影後のフィルム送りを行う前にカウンターノブを押して解除し、その後フィルムを停止位置まで送る手順が指定されている。
したがって、ローライキンを使う場合は「カウンター操作を忘れずに行ってからフィルムを送る」という手順を身体で覚えておくのが安全である。
フィルムカウンターの進め方

ローライキンのフィルムカウンターは本体側の120フィルム用カウンターとは別に扱う。
カウンターノブを押して操作することで、35mmフィルム用のカウンターを次のコマへ進めるためのフィルム送りが可能になる。
この操作を忘れた状態でフィルムを無理に送ろうとすると、フィルム送り機構に負担をかける可能性がある。
そのため、撮影後は、
「シャッター → カウンター → 巻き上げ」
という順番を毎回確認するとよい。
ローライキン撮影の基本動作
① シャッターを切る
② カウンターノブを押す
③ 巻き上げクランクを回す
④ 次の撮影位置で停止する
⑤ 次の撮影を行う
なお、ローライキンでは通常のローライフレックスと同様にシャッターのチャージ操作を行う。ローライフレックスとローライコードではシャッター機構の扱いに違いがあるため、使用するカメラ本体の操作方法も確認しておく必要がある。
フィルムの取り出し方
最後に、撮影がすべて終了した後の35mmフィルムの取り出し方を解説する。
撮影済みフィルムは、そのままカートリッジを取り出すことはできない。
まず、撮影済みのフィルムを35mmフィルムカートリッジへ巻き戻す必要がある。
①フィルムを巻き戻す

最後の撮影が終わったら、ローライキンのカウンターノブを押した状態でフィルム巻き戻しノブを回す。
ローライキンの説明書でも、カウンターノブを押し下げながら巻き戻しノブを回してフィルムをカートリッジへ戻す手順が示されている。
フィルムがすべてカートリッジへ戻ったことを確認する。
巻き戻し時にはフィルムの先端がカートリッジ内部へ完全に入り込まないよう注意する必要がある。再装填を予定している途中撮影のフィルムなどではフィルム先端の扱いにも注意が必要である。
②フィルムを取り出す
フィルムの巻き戻しが完了したら、巻き戻し側のアダプターを操作してフィルムカートリッジを取り出す。
このとき、フィルムが完全に巻き戻されていることを確認してからカートリッジを取り出す。
撮影済みの35mmフィルムは光にさらすと感光してしまうため、取り出した後は速やかにフィルムケースなどへ収納する。
まとめ:ローライキンの使い方

ローライキンはローライフレックスを単に35mmフィルムで使えるようにするだけのアクセサリーではない。6×6判を楽しむために設計された二眼レフを35mm判という別のフォーマットでも楽しめるようにする非常にユニークなアクセサリーだ。120フィルムと35mmフィルムでは画面サイズも描写の性格も変わるため、同じローライフレックスでも異なる撮影体験を楽しめる。普段は6×6判で撮影し、フィルムの入手性や撮影枚数を重視したいときにはローライキンを使う。このように使い分ければ、ローライフレックスの楽しみ方をさらに広げることができる。
- ローライキンで35mm撮影が可能
- 対応機種と仕様の確認が重要
- 圧板を「24×36」に変更する
- フィルムは正しい経路に通す
- 「シャッター→カウンター→巻き上げ」が基本
- 撮影後はフィルムを巻き戻す
- 取り外しは装着と逆の手順で行う

